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自然界で発生する”残響”・”反響”現象を電気/機械的に再現するリバーブ・エフェクトは、楽器業界ではハモンド社が制作するエレクトリック・オルガンにおいて初めて実用化された。今日”スプリング・リバーブ”と呼ばれるエレクトロ・メカニカル・リバーブの一種は、米国における通信技術開発の中枢として知られるベル研究所が長距離電話回線使用時に起きる音声の遅延をシミュレートする為に開発されたと言われており、ハモンドの創業者であるローレンス・ハモンドがこの実験装置に目を付け、自社の楽器に応用したのは1930年代半ばの頃である。1940~50年代を通じ、ハモンドのエンジニアであったアラン・ヤングらによってユニットの小型化を進められたスプリング・リバーブは、1960年に傑作機”タイプ4″を生み落した。”リバーブ・タンク”と呼ばれる全長=約17インチ(約430mm)のシャシー/ケースに、2コース/4本のスプリングを張ったフレームをフローティング・マウントするこのユニットは、1960~1970年代にかけて生産がハモンド傘下の企業であるギブズ社~アキュトロニクス社へ移管された後も、スタンダード・モデルとして生き残っている。

laurence hammond

 

LAURENCE HAMMOND (ローレンス・ハモンド)
1895年1月11日、イリノイ州エバンストンに生まれる。1973 年7月1日、コネチカット州コーンウォールの自宅で亡くなった。享年78歳。

1961年、すでにギター・アンプ・メーカーとして成功を収めていたフェンダーは、ハモンド”タイプ4″タンクと6K6チューブ(ドライバー)~7025チューブ(リカバリー)からなるサーキットを組み合わせたスタンドアローン・リバーブ・ユニットを発表した。”フェンダー・リバーブ”、またはサーキット・ナンバー”6G15″の名で親しまれている本機の生産は、ブラウン・トーレックス期に始まり、外装がブロンド/ホワイトを経てブラック・トーレックスへと変更されたのちの1960年代後半まで続けられている。1963年になると、フェンダーは同社初のリバーブ・ユニット内臓のコンボ・アンプである”ヴァイブロヴァーブ(サーキット・ナンバー=6G16)”の販売を開始する。2本の6L6パワー・チューブによって2基の10インチ・スピーカーを駆動する本機では、リバーブ・ドライバー回路に12AT7チューブ、リカバリー回路に7025チューブがそれぞれ用いられており、ブラウンに塗られたコントロール・パネルには”Reverb”ノブを搭載していた。ヴァイブロヴァーブは、1963年中に外装をブラウンからブラック・トーレックスに、サーキットをナンバー”AA763″へとアップデートされているが、リバーブ周りの設計は6G16を受け継いでいる。また、同年には1950年代のツイード期よりラインナップされてきた、”デラックス”、”ツイン”、”スーパーの各モデルにもリバーブ内臓バージョンが登場し、それぞれ”デラックス・リバーブ”、”ツイン・リバーブ”、”スーパー・リバーブ”と命名された。翌1964年には、ヴァイブロヴァーブが”ヴァイブロラックス・リバーブ”に統合される形で姿を消すとともに、小型コンボである”プリンストン”にもリバーブ内臓バージョンが用意される。1960年代後半にかけては、他にも”プロ・リバーブ”(1965年~)、”デュアル・小マン・リバーブ”(1968年~)、”バンドマスター・リバーブ”(1968年~)、といった大型コンボ~ピギーバック・ヘッドが輩出され、このエフェクトが”チャンプ”のようなスチューデント・モデルを除くフェンダー・アンプの標準装備となっていった。1960年代末以降、フェンダー・アンプがシルバーフェイス期(1967年~)、ポール・リヴェラ期(1982年~)、レッド・ノブ期(1987年~)へと変遷していく中にあっても、スプリング・リバーブが生成する濃密な残響は同社製品ならではの特長として守り抜かれている。今日、高い人気を誇るビンテージ・リイシュー~モディファイやホットロッドといった製品のリバーブ・セクションは、この様な約半世紀に及ぶ技術的蓄積の上に設計されているのだ。
スプリング・リバーブは、音声信号をトランスミッション・スプリングと呼ばれる金属製のバネに伝達し、これを振動させる事で遅延時間が短いディレイ音の”反響~畳み込み”を生成するとともに、決められた時間だけ持続するエフェクター。リバーブ・タンクの前段にはドライバーと呼ばれる回路(真空管時代にはトランスフォーマーを内臓する事が多かった)が、後段にはリカバリーと呼ばれる回路がそれぞれ置かれ、信号のインピーダンスを調整する。電気信号⇔機械的振動の変換を担うインプット/アウトプット・トランスデューサ―は、コイルとマグネットを組み合わせた電磁石の一種で、その動作原理はエレクトリック・ギターのピックアップに近い。スプリングが張られたフレームをシャシー/ケースに固定する手法としては、一般に小さなスプリングとダンパーを介したフローティング・マウントが用いられ、設置面に当たるアンプ・キャビネットの振動がリバーブ・タンクに伝わる事を適度に抑制している。初期反射=アーリー・リフレクションと呼ばれる遅延時間と減衰時間=ディケイ・タイムと呼ばれるエフェクトの持続時間はスプリングの長さやダンパーの素材/サイズなどによって異なり、今日、アキュトロニクス/ベルトン社では全長約9インチ(約230mm)のシャシーに2コース/2本のスプリングを内臓するタイプ1、約17インチ(約430mm)のシャシーに2コース/4本のスプリングを内臓するタイプ4、タイプ4と同サイズのシャシーに3コース/6本のスプリングを内蔵するタイプ9などを生産している。
65シリーズはこれまで根強い人気を誇っていたモデルで、通称ブラック・フェイスと呼ばれるシリーズ。68シリーズは通称シルバー・フェイスと呼ばれ、もともと68年から80年まで販売していたモデルをベースに製作されたシリーズ。68シリーズは外見を復刻するだけでは無く、例えばスピーカーにロックなフィーリングが得やすいセレッション製を採用したり、異なるサウンド・キャラクターを持つ2つのチャンネルを搭載したりして、現代のプレイヤーのニーズ答えるような機能を追加しようというのがコンセプト。ビンテージ・リイシュー・タイプの65シリーズと、現代のニーズに寄り添った68シリーズ、と言う事が出来る。伝統的なブルースやカントリーが好きであればブラック・フェイスを、ロックン・ロールやオルタなのようなミュージックが好きであればシルバー・フェイスが最適だ。
フェンダーのトーン回路においてフラットという概念は無いという事を知る事。フェンダーでは、ギター・アンプでフラットなサウンドと言うのはあまり良い音では無いという考えがある。その為、まずは各トーンのツマミをフルまで上げどの程度まで出るのかを確認し、そこからカットしながら音作りをしてみるのも良いだろう。もちろん使っているギターやエフェクターなどによってまちまちだが。
フェンダーは50年代末よりテープ・エコーのユニット販売をしていた。リバーブはエコーとよく似ており、残響効果を生み出すエフェクトで当時のミュージシャンにとって貴重なエフェクトだった。オルガンについていたリバーブからヒントを得て開発されたユニットがフェンダーのリバーブの原点。リバーブ音のキャラクターを自由に変える事が出来たこのユニットはサーフ・ミュージックで普及し当時の音源ではそのサウンドを聴く事が出来る。こうした背景の中でリバーブ・ユニットを内蔵した最初のフェンダー・アンプであるヴァイブロヴァーブは誕生した。